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音楽そしてコントラバス・トップ>工房>コントラバス調整室>このページ メンテナンス用具メンテナンスには道具が要る。”これこれを楽に行うにはどうすればよいか、その為にはどんな道具が必要か”を手探りで考えるのは楽しい作業だ。 コントラバスメンテを一貫して説明する解説本があれば良いのだがそれはないのでプロ職人の具体的な作業方法を知る事は出来ない。仮にあってもナイフさばきの覚束ない素人が技を駆使出来もしない。そこで断片的な知識をかき集めてそれを元手に、自分でも出来るメンテ方法を考えては道具を作った。その知識も得られない場合はまるまる自己流で考え出した。 DIY店に行く時は頭を真っ白にして”どんな売り場にある、何に使うものか”を一切無視して見て回る。勿論テーマは頭に入れて行き”こんな目的に叶うものは?”と探す。そのようにして少しずつ増えた道具類をご紹介する。
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■メンテ用具類
■自作道具について、作り方と用途の概略をご説明する。 1)駒ガイド (用具一覧表へ戻る) 2)搦め手 (用具一覧表へ戻る) 幅2センチの樹脂の平棒を暖めて加工する。先端の曲げは魂柱を優しく包んで離さない程度に、そして魂柱から外す際には樹脂の弾力ですっと外れるように曲げ方を調節しておく。その為には熱してまだ暖かい内に魂柱そのものを挟み込んで曲げ加減を確認する。 レンジで温めながら曲げて行く。火の上は熱いのでペンチとラジオペンチを使う。曲げ加減は魂柱を挟み込んでみたり、実際に楽器の中で使ってみて作業が楽に出来るように何度も曲げ直して調節する。 尻尾の先は手を離した時にF孔の中に落ち込まないように適当に曲げる。 切り込みはF孔の中で裏表を変える際に必要。 魂柱を掴んだようす。各部分の曲げ方は微妙に使い心地と関係するので、使いながら改良して行けばよい。 この道具を考え付いたのは偶然だった。以前から魂柱を立てて、定位置に導く際によく失敗して倒していたので、そうならないない為に針金で補助道具を作ろうとぼんやり考えていた。ある日魂柱立てに取り掛かってから泥縄式に作ろうと思い立った。魂柱を転がしたまま道具箱や倉庫を探したが針金がない。目に当たったのは”駒ガイド”を作った残りの平棒で、これで作ってみると予想を超えて使い心地の良いものが出来てしまった。 3)腹内鏡 (用具一覧表へ戻る) 鏡部分は9a×11aのステンレス鏡。柄の部分は菜箸(長い角箸)、いずれも100円ショップで買った。柄の先端はゴムで裏打ちしているカーペットを適当に切り小さい孔をあけて取り箸を突き刺した。これは楽器の中に落ち込まない為の仕掛け。 裏から見た所。ヒンジ部分は100円ショップのスタンド鏡。最初はこの鏡で覗き込んでいたが、視界が狭かったのでこの裏にステンレス鏡を接着して改良した。 4)ステレオライト (用具一覧表へ戻る) DIY店で中間スイッチ付きの家庭電源用豆球を買い、豆球部分をもう一つ買って並列にハンダ付けしたもの。簡単極まりない。豆球はF孔に入る大きさなら良い。余り明るいものは発熱量が大きいので注意。 コードを二股にした先の長さは短かければ電球の熱で表面板が痛むし長すぎれば裏板が痛む。失敗しない為には使う状態のように紐を垂らしてみて長さを決めればよい。そうしなかった私は一度失敗して継ぎ足した。 5)魂柱位置測定器 (用具一覧表へ戻る) ごく簡単なもの以外の弦楽器メンテナンスは魂柱立て作業と密接に関わっているが、上手に仮立て出来ても、元々立っていた位置に導く事が出来なかったら何をさしおいてもそのまま遠路を楽器工房まで運んで職人さんのお世話にならなければ良い音で演奏する事は出来ない。私の場合なら大きな木箱に楽器を詰めて運送屋さんへ電話しなければならない。問題は、輸送する場合楽器を痛めない為に駒と魂柱は外さなければならない事。返送も同じだからこれでは全体が無意味。 魂柱位置を復元するのに素人は何を目安にすれば良いか解らない。最初にどこに立っていたのか、自分が立てた位置は一体どのあたりなのか。それらが解らない限り以前と同じ位置に立てる事が出来ず、どちらへ何ミリ動かしたのかが判断出来ない。魂柱位置決定の困難さが”素人メンテは危険だ”の主な論拠ではないだろうか。 ところがこの道具を使うと魂柱位置は見事に”目で見える”のだ。これと”搦め手”を使う事で魂柱立ては何気ないほど身近なメンテナンスになってしまった。 この測定器の作り方は30センチのステンレススケールを二本買い求め、一本は直径20ミリの金属用ホルソーを電動ドリルにつけて魂柱に接する穴をスケールの端にあけ、適当な位置から先を金ノコで切り落とす。そのくぼんだ中央部をもう一本のスケールの0位置に合わせて根元を固定する。固定は絶縁テープが安直だが、最近友人がビス止め式に改良し、中にspacerを取り付けて魂柱にあてがいやすいようにしてくれた。スケール先端裏側にはフェルトを貼り付け、楽器表面板に触れて痛めるのを防ぐ。 魂柱位置測定器の作り方 部品点数は8点.30aステンレススケールが二本(手前が上板、奥が下板)、3.5_ボルト2本、ナット2本、spacer2個。但し簡略版なら30aステンレススケール二本だけで良い。 根本部分の拡大画像。spacerを使う事で下板をF孔に差し込むのが楽になった。 先端部分の拡大画像。下板は魂柱に突き当てる為に直径2aのホルソーで穴をあけ、それから先を金ノコで切り落とす。次に上板と下板の先端中央部分を重ね合わせ、根本を固定する。その際には画像のように上板は先端部分が0a位置になるよう、しかもそれが直読出来るように重ねる。上板の裏側には楽器表面を保護するフェルトを貼り付けてあるのが見える。下板にもビニールテープを巻いてある。 別の角度から見た先端部分。 簡略版の魂柱位置測定器。spacerは使わず、根本をビニールテープで巻いて固定するだけ。ごく最近までこのかたちで使っていた。 6)直立鏡 (用具一覧表へ戻る) 7)背比べ (用具一覧表へ戻る) 30a角以上の広さの丈夫な合板上に、正しく直交する二線を引き、曲がりのない板を一方の線に沿って取付け(この画像ではクランプで固定)、もう一方の線には1a浮かせた棒を沿わせて取り付ける。これに現在使っている魂柱と頭を表面板の通りに斜めカットした新魂柱を並べているところ。 今後道具は更に増えるかも知れない、増えたらその都度ご紹介しよう。 2003/11/2 |