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メンテナンス用具

メンテナンスには道具が要る。”これこれを楽に行うにはどうすればよいか、その為にはどんな道具が必要か”を手探りで考えるのは楽しい作業だ。

コントラバスメンテを一貫して説明する解説本があれば良いのだがそれはないのでプロ職人の具体的な作業方法を知る事は出来ない。仮にあってもナイフさばきの覚束ない素人が技を駆使出来もしない。そこで断片的な知識をかき集めてそれを元手に、自分でも出来るメンテ方法を考えては道具を作った。その知識も得られない場合はまるまる自己流で考え出した。

DIY店に行く時は頭を真っ白にして”どんな売り場にある、何に使うものか”を一切無視して見て回る。勿論テーマは頭に入れて行き”こんな目的に叶うものは?”と探す。そのようにして少しずつ増えた道具類をご紹介する。

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■メンテ用具類
用具名の中には私の自作道具で自分勝手にネーミングしたものもある。
左セルの作業項目をクリックするとそれに必要な右セルの用具画像が表示される。

※ 弦の交換 2Bなどの柔らかい芯の鉛筆 金属用丸ヤスリ ラジオペンチ 粘着テープ(滑りにくい材質) 潤滑剤 ティンパニの皮
※ 駒の調整 直角定規(曲尺=カネジャク) 30センチステンレス物差し 駒ガイド 補助照明
※ 魂柱位置調整 魂柱立て 搦め手 スリム金槌(12ミリの唐物槌) 30センチステンレス物差し 腹内鏡 ステレオライト 魂柱位置測定器 直立鏡 ピンセット
※ 魂柱加工 魂柱位置調整用品に加えて ワイド補強金具(一辺25センチ) 自由スコヤ(15センチ) スラントゲージ  コーナークランプ 細かい刃のノコギリ(導突目)背比べ 木綿糸 マジックペン

■自作道具について、作り方と用途の概略をご説明する。
使い方の詳しいご説明はそれぞれを使ったメンテナンスのやりかたの小文の中でご紹介して行く。

1)駒ガイド   (用具一覧表へ戻る)
樹脂製の平棒。販売する用途不明。駒の位置確認に使う。30センチ余りに切った物を二本、レンジであぶって表面板の曲がりに合わせておく。あぶる時には左右方向に曲げてしまわないように気を付ける。あっけないほど簡単な道具だが、コントラバスほど大きくて左右のF孔切り込みが同時に視界に入らない駒の位置決めに威力は大きい。
コントラバス駒位置調整用具

2)搦め手   (用具一覧表へ戻る)
”魂柱立て”で魂柱を立てるのはコツと経験が必要。そこで魂柱を掴んで作業の間中は倒れないようにしておく、という用途に限ったこの”搦め手”は専門用具の”魂柱立て”だけを使うより作業が楽で早い。折角仮立て出来たのにそれを定位置へ動かす間に倒してしまい、そのたびに取り出すのがおおごとという初心者状態をショートカットする事が出来る。これに掴ませたまま”魂柱立て”と”スリム金槌”を使い分けて定位置に導く。

幅2センチの樹脂の平棒を暖めて加工する。先端の曲げは魂柱を優しく包んで離さない程度に、そして魂柱から外す際には樹脂の弾力ですっと外れるように曲げ方を調節しておく。その為には熱してまだ暖かい内に魂柱そのものを挟み込んで曲げ加減を確認する。

レンジで温めながら曲げて行く。火の上は熱いのでペンチとラジオペンチを使う。曲げ加減は魂柱を挟み込んでみたり、実際に楽器の中で使ってみて作業が楽に出来るように何度も曲げ直して調節する。
コントラバス魂柱調整用具1

尻尾の先は手を離した時にF孔の中に落ち込まないように適当に曲げる。
コントラバス魂柱調整用具2

切り込みはF孔の中で裏表を変える際に必要。
コントラバス魂柱調整用具3

魂柱を掴んだようす。各部分の曲げ方は微妙に使い心地と関係するので、使いながら改良して行けばよい。
コントラバス魂柱調整用具4

この道具を考え付いたのは偶然だった。以前から魂柱を立てて、定位置に導く際によく失敗して倒していたので、そうならないない為に針金で補助道具を作ろうとぼんやり考えていた。ある日魂柱立てに取り掛かってから泥縄式に作ろうと思い立った。魂柱を転がしたまま道具箱や倉庫を探したが針金がない。目に当たったのは”駒ガイド”を作った残りの平棒で、これで作ってみると予想を超えて使い心地の良いものが出来てしまった。

3)腹内鏡   (用具一覧表へ戻る)
最初は100円ショップの小さいスタンド鏡に長い菜箸を接着して使っていたが視界が狭いのでそのスタンド鏡の裏に9センチ*11センチのステンレス鏡を同じ店で買って貼り付けた。魂柱の頭と表面板の馴染み具合などを検査する。

鏡部分は9a×11aのステンレス鏡。柄の部分は菜箸(長い角箸)、いずれも100円ショップで買った。柄の先端はゴムで裏打ちしているカーペットを適当に切り小さい孔をあけて取り箸を突き刺した。これは楽器の中に落ち込まない為の仕掛け。
コントラバス魂柱調整用具5

裏から見た所。ヒンジ部分は100円ショップのスタンド鏡。最初はこの鏡で覗き込んでいたが、視界が狭かったのでこの裏にステンレス鏡を接着して改良した。
コントラバス魂柱調整用具6

4)ステレオライト   (用具一覧表へ戻る)
以前は腹内照明としてご紹介していたものをリネーム。豆球を並列につないで両側のF孔から差し込んで内部を明るくする為のもの。二個なくとも構わないのだが、魂柱の裏側を見たい時など三個目の照明が欲しくなる事もある。長時間の使用は楽器の温度上昇があるので控えたい。

DIY店で中間スイッチ付きの家庭電源用豆球を買い、豆球部分をもう一つ買って並列にハンダ付けしたもの。簡単極まりない。豆球はF孔に入る大きさなら良い。余り明るいものは発熱量が大きいので注意。
コントラバス魂柱調整用具7

コードを二股にした先の長さは短かければ電球の熱で表面板が痛むし長すぎれば裏板が痛む。失敗しない為には使う状態のように紐を垂らしてみて長さを決めればよい。そうしなかった私は一度失敗して継ぎ足した。
コントラバス魂柱調整用具8

5)魂柱位置測定器   (用具一覧表へ戻る)
私のメンテナンス作業全体はまさにこの道具を考え付いた事で成り立っていると言える。

ごく簡単なもの以外の弦楽器メンテナンスは魂柱立て作業と密接に関わっているが、上手に仮立て出来ても、元々立っていた位置に導く事が出来なかったら何をさしおいてもそのまま遠路を楽器工房まで運んで職人さんのお世話にならなければ良い音で演奏する事は出来ない。私の場合なら大きな木箱に楽器を詰めて運送屋さんへ電話しなければならない。問題は、輸送する場合楽器を痛めない為に駒と魂柱は外さなければならない事。返送も同じだからこれでは全体が無意味。

魂柱位置を復元するのに素人は何を目安にすれば良いか解らない。最初にどこに立っていたのか、自分が立てた位置は一体どのあたりなのか。それらが解らない限り以前と同じ位置に立てる事が出来ず、どちらへ何ミリ動かしたのかが判断出来ない。魂柱位置決定の困難さが”素人メンテは危険だ”の主な論拠ではないだろうか。

ところがこの道具を使うと魂柱位置は見事に”目で見える”のだ。これと”搦め手”を使う事で魂柱立ては何気ないほど身近なメンテナンスになってしまった。

この測定器の作り方は30センチのステンレススケールを二本買い求め、一本は直径20ミリの金属用ホルソーを電動ドリルにつけて魂柱に接する穴をスケールの端にあけ、適当な位置から先を金ノコで切り落とす。そのくぼんだ中央部をもう一本のスケールの0位置に合わせて根元を固定する。固定は絶縁テープが安直だが、最近友人がビス止め式に改良し、中にspacerを取り付けて魂柱にあてがいやすいようにしてくれた。スケール先端裏側にはフェルトを貼り付け、楽器表面板に触れて痛めるのを防ぐ。

魂柱位置測定器の作り方

部品点数は8点.30aステンレススケールが二本(手前が上板、奥が下板)、3.5_ボルト2本、ナット2本、spacer2個。但し簡略版なら30aステンレススケール二本だけで良い。
コントラバス魂柱位置測定器1

根本部分の拡大画像。spacerを使う事で下板をF孔に差し込むのが楽になった。
コントラバス魂柱位置測定器2

先端部分の拡大画像。下板は魂柱に突き当てる為に直径2aのホルソーで穴をあけ、それから先を金ノコで切り落とす。次に上板と下板の先端中央部分を重ね合わせ、根本を固定する。その際には画像のように上板は先端部分が0a位置になるよう、しかもそれが直読出来るように重ねる。上板の裏側には楽器表面を保護するフェルトを貼り付けてあるのが見える。下板にもビニールテープを巻いてある。
コントラバス魂柱位置測定器3

別の角度から見た先端部分。
コントラバス魂柱位置測定器4

簡略版の魂柱位置測定器。spacerは使わず、根本をビニールテープで巻いて固定するだけ。ごく最近までこのかたちで使っていた。
コントラバス魂柱位置測定器5
(注)在イタリアクレモナの日本人弦楽器製作者のHPでほとんど同じアイデアによる魂柱位置計測用ゲージと名付けられた道具が画像入りで紹介されていたのを2006年末に発見。バス用ではないので小さく、表板はプラスチック物差しをそのまま使って裏板とは根元で糊付けをしているようだ。これは彼独自の工夫なのか、あるいはクレモナの弦楽器製作者の間で一般的なものなのかはホームページでは窺い知れなかった。現在そのサイトは閉鎖中。

6)直立鏡   (用具一覧表へ戻る)
もし楽器がフラットバックでないならこの道具は使えない。フラットバックの背面板、魂柱の傍に置いて魂柱の直立を確認する為に使う。最初は小さい鏡を使っていたが最近10センチ*11センチの大きな視界のものに変えた。CDとかMDのケースのヒンジ部分を小さく切り取って”互いに直交する三平面”状態にし、その一面を鏡面に接着し、他面にあいている穴に紐を通している.100円ショップで裏の平面性の良い鏡を買う。この鏡は9a×11a。それに紐を取付け、その紐がF孔の中に落ちないような仕掛けをしてやる。紐を通す穴はカセットケースのヒンジ部分をペンチで欠き取って接着したもの。形と寸法がお誂え向きだった。
コントラバス魂柱位置調整用具9

7)背比べ   (用具一覧表へ戻る)
現用の魂柱を参考にして新品未加工魂柱から魂柱を作る際に使うもの。少しでも正確に長さ寸法を採りたいので、単純に全長を写し取るのではなく魂柱の芯位置で採寸する為の道具。これによって全長を測って製作するより加工精度は倍になる。こんな目的にはハイトゲージという良い道具があってそれがイチオシ。目が悪い人にはデジタルで数字直読式が良い、過剰品質なほど実に正確(フラットバック用の魂柱製作に有効)、でも値段が高すぎる。私のは廃材を使って原価0円。製作に当たっては正確に直交線を引いて作るので30センチ平方程度以上の9ミリ合板が欲しい。その上に取り付ける二辺は真っ直ぐな材を使う事。一辺は画像のように橋状にするのだがその橋桁は1センチ高にする事(魂柱直径が2センチの為、芯の位置は1センチの高さにある)。

30a角以上の広さの丈夫な合板上に、正しく直交する二線を引き、曲がりのない板を一方の線に沿って取付け(この画像ではクランプで固定)、もう一方の線には1a浮かせた棒を沿わせて取り付ける。これに現在使っている魂柱と頭を表面板の通りに斜めカットした新魂柱を並べているところ。
コントラバス魂柱長さの決定

今後道具は更に増えるかも知れない、増えたらその都度ご紹介しよう。

2003/11/2

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