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楽譜/楽器の保険

クラブ全楽器の焼失事件から話は始まる。

学校を卒業して2年後に結婚してからも、所在地から1時間弱の山口市にある古巣の山大マンクラへはたびたび遊びに行った。そうしている内に創部10周年記念演奏会が催され、ギターパートと指揮で出演した。終われば当然の如く打ち上げ、学生時代にせっせとバイトをして買った、思い入れの強い中出阪蔵ギターを学校のクラブ楽器保管庫へしまって夜の町へ繰り出した。

翌日自宅へ帰るのに倉庫にカギが掛かっていた為か、または面倒くさくなったのか楽器を持って帰らなかった。そのまま取りに行き損ねているうちに、程なく何とした事か、大学が火事になってしまった。私のギターもクラブの全楽器も、創立以来集めた楽譜も一部楽譜係の下宿に置いていた楽譜を除いては全部丸焼けになってしまった。

火事があったと知らせを聞くなり車で山口へ駆けつけた。

お骨拾いのように、せめて金属製の糸巻きでも見つけようと、まだ焦げた臭いが山裾を覆っていて灰も暖かい焼け跡の、倉庫とおぼしき辺りを掻き回して探したが無駄だった。クラブ員はどうしているかと、その足で真っ直ぐ部長の下宿を訪れた。

そこには主だったクラブ役員が十人余り、それぞれが思い思いに壁に背をもたせ掛け、足を投げ出して無気力に部屋の天井をを見上げていた。皆無言だった。私が行くまでもずっとそうしていたのだろう。

状況を聞くのだが返事は重い。全楽器を焼失したのは確かだ。何とかしてやらねば。"よし、 先輩皆に手紙を送って義捐金を集めてやるから元気を出せ。それで楽器の一つでも買え"

帰って早速卒業生名簿を見て全員に手紙を送り浄財を募った。創部間もないので皆若く最年長のOBでも30歳前くらいの事だ。それでも苦しい中を遣り繰りしてくれて次第に現金書き留めが送られて来、総額で昭和40年代半ば過ぎの当時、十万円余りだったと思うがクラブに寄贈出来た。

当時私も若く、先ばかり見ていて、集まった義捐金の総額とクラブがそれをどう使ったかの報告を兼ねた、お礼の手紙をOBの皆さんに出さなかったような気もする。当時の手帳を見れば中間報告はしたと書いてはあるが、この場を借りて改めて当時の関係者にお礼を申し上げたい。

この思いがけない火事は忘れる事の出来ない事件であった。

*

さて翻って考えるに、学生や社会人の音楽サークルで、団や個人の楽器なり楽譜を倉庫へ保管している例は多いと思うが、万全の保管場所は確保出来ているだろうか。火事や天災へどの様に備えているだろうか。

ホームページを開設する事を決めた時から、楽器/楽譜の保険については調べて公表しようと思っていた。

知り合いの損害保険代理店へ、趣旨とホームページにアップロードするものだとお断りをした上で問い合わせて見た。
前提条件として、対象物は共同の倉庫へ収納している個人及び団の楽器/楽譜全体とし、それに盗難保険/火災保険を掛ける事が出来るか、また保険料はいくらかという問い合わせ方をして見た。

一社は楽器だけの保険はなく個人の家にある家財道具全体に掛けるものだった。従ってこの設問の趣旨に合致しない。

もう一社はこのような場合でも保険を掛ける事が出来ると言う。
保管する楽器ごとに協定を結び、市価の7~8割の返戻金が戻ってくるとの返答であった。保険の掛け金は保険金額100万円につき弦楽器は年間6千円。但し盗難保険は連続3日の不在時には下りないと言う事で、一週間毎に練習がある団(一週間後でないと確認出来ない場合)に盗難保険は意味が薄い。

以下に質問とその返答をコピーして貼りつける。もしこの小文をきっかけに保険を検討される音楽団体があれば、何社かに相談を掛け、見積を取って見ると良いだろう。また読者で保険業務に携わっている方が居て、別の情報があればお知らせ頂きたい。参考資料としてHPに保存する。 

このたび保険業界の事情を垣間見たような気がする。各社同じような企画をしていると思い込んでいたが違うようだ。保険とは知り合いの保険代理店に頼めばそれで済むと言うものでもない。一寸特殊なものになれば何社かに相談をして"情"ではなく"智"で決定すべきものの様だ。

*

■ 質問

楽器/楽譜の保険について

前提
1 合奏団の楽器何台かを常に保管する。(予め楽器の単価/個数は登録する)
2 楽器は合奏団の所有楽器及び個人所有のものを取り混ぜて保管する。
3 楽譜も保管する(楽譜も保険の対象とする)
4 保険の種類は盗難保険及び火災保険とする

保管場所ケース1 公共の建物(学校/文化会館/公民館等)
保管場所ケース2 個人所有の建物

上記の場合に掛けられる保険はあるだろうか
あるとすればどのような条件がつくのか
保険金額はどのような計算根拠であるのか

*

■ 解答

楽器に関する保険のお見積書

☆物件
楽器/楽譜    合奏団所有及び個人所有
所在地     公共建物/個人居宅など
被保険者    複数(夫々明記の必要あり)

☆保険ご希望内容=盗難と火災
保険金額  :  個別に協定 (通常の使用状況程度で市場販売金額の
         70〜80%で楽譜も同様)
免責金額  :  5000円
例外    :  名作や美術品に類する高級楽器や楽譜の原本など骨董品類似のものは対象になりません

☆弦楽器年間保険料:動産総合保険 保険金額百万円につき
           場所特定の場合         6000円
           場所不特定の場合(海外不担保) 15000円

    免責条件      盗難保険は連続3日不在時不担保 ほかに
         1 弦の単独損害不担保
         2 音色/音質の変化不担保
         3 温度/湿度による損害不担保

団体加入でなく、個人の場合は”暮らしの安心保険マスト”に加入すると場所不特定/事前の楽器の通知不必要/免責3000円/市場価格の100%を限度に保障されます 

以上

*

これに対して質問を行った。

質問 対象にならない高級楽器とはどのようなものを指すのですか?

解答 高級楽器だからと言って保険契約が出来ないのではありません。量産品のように定価がなく値段の算定が困難なものについては、その価格を証明する書類(購入時の領収書など)があれば、それに基づいて協議の上保険金額を設定します。

*

保険代理店からの返答は以上のようなものであった。もし、読者が楽器に保険を掛けて居なかったら、これを機会に検討してみてはどうだろう。団の倉庫に置いてある楽器を念頭にこの小文を書いたが、個人所有の自宅に置く楽器については保険料が安いようだ。上述のように個人の自宅の家財道具一式に掛ける保険もある。併せて何社かに問い合わせをされる事をお勧めする。

2001/5/10

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