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音楽そしてコントラバス・トップ>遮音室>このページ 遮音一般住宅の中で音楽をしようと思えば 音をどう防ぐかが大きい問題。隣家に気を使うし 家族の生活もある。 近くの道路を車も通る。 私の職業は 住宅設計とその建築請負だが、私の音楽演奏の趣味とあいまってそれには大変興味を持っている。音を外に伝えず中に入れないようにするにはどうしたら良いか。敷地と予算にゆとりがあるラッキーな人はそう多くない。制限が多い中で何とかしようと考えるのが実情ではないだろうか。それにしても安直に出来る事ではないが。
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遮音の最大のネックは開口部、窓とドア。 いずれも二重構造を考えたほうが良い。私のオーディオルームは 玄関から入ってすぐの位置にあり生活動線に面しているので、前室を設けられず生活スペースとの境界はドア一枚だけでプランした。その為 ドアそのものを三重構造で作らせたので分厚く重くなってしまい、それに見合うヒンジとドア枠とを併せればかなり高くついた。 素材が 新建材でも良いのなら メーカー製の薄目のドアもある。又、例えば廊下の奥に部屋を設置するプランなら廊下の途中にもう一枚ドアを設置する手もある。この場合はどちらのドアも少し頑丈と言う程度のもので良いかも知れない。 窓は ガラスだけが二重のペアガラスサッシより、サッシ全体が二重になっている二重サッシが良い。それよりも更に良いのが出窓にして内側と外側にそれぞれ普通のサッシを取りつける事。そこが窓でなくテラス戸ならその部屋だけの為の広縁をつける。広縁を前室と考える二重構造だが、予算と敷地に制限があれば窓と同様に二重サッシとする。 いづれにしても 遮音性が良く しかも居心地の良い部屋にする為にはデザインを含めて開口部にはかなり気を使う。遮音性と居住性を両立させるのはなかなか難しい。遮音性能ばかりに気を取られると、穴蔵になってしまう。穴蔵に長時間居られるものではない。
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次の問題は壁。 間取りの取り方で 隣室を居室にしなければ簡単。例えば物置にする、せめて押入れにするなど。もしそれが可能なら大掛かりな事はしなくて良いだろう。そうでなかったら面倒。 少しくらい壁を分厚くしても解決しない。こちらの内壁と隣室の内壁を音響的に切離してやれば良いが工事は一寸大工職泣かせだ。壁の中に吸音材を入れて解決、としたい所だがこれは全く役に立たない。 吸音と遮音は別物。 遮音はさえぎる物の質量にも大きく左右される。吸音材の質量など知れたものだ。
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床と天井が残った。 床を二重にするのは比較的簡単だが、天井は重くなるので注意が必要。出来たら小屋裏の梁をしぶく渡してそれにしっかり留めたい。 普通、天井を吊下げる力を担っているのは母屋(モヤ)という屋根下地板直下にある断面が9センチ角の横に渡した細めの柱のようなものと、太い梁の二種類の木材。母屋ばかりに遮音構造の重い天井を吊下げると、上から屋根の重みも加わっているので長い間に屋根が部分的に沈んでくる。 これらの仕掛けを比較的容易に施工できるのは在来工法による木造の洋風の部屋。ツーバイフォーは音響的にブリッジが多くそもそも遮音構造にしづらい。あえてしようと思えば 部屋の中に 浮き構造の部屋をもう一つ作ることとなる。建材メーカーが内装用遮音材を製造している。私の家では使わなかったが、これを使用するのも一つの方法かも知れない。
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いづれにせよ 遮音は部屋の6面全てに処置をしなければ意味がない。問題は使用する材料と構造だけではない。建材と建材の繋ぎ目や角かど等は隙間が出来ないように施工しなければならないし、出来た隙間は音響的に目潰しをしなければならない。 もう一つ忘れてならないのは換気。 遮音性の良い部屋は必ず気密性が高い。冬場に灯油ストーブを焚かない限りまさか窒息する事はないだろうが、換気には気をつけたい。しかし遮音性を持たない普通の換気システムでは問題が残る。 これらをどう予算を節約しながら実効を挙げるかが工夫のしどころ。また基本的な事だが、どの程度の遮音性を必要としているかにも注意を払う必要あり。お隣と接近している部屋でピアノを弾くのなら腕をまくって取り掛からねばならない。 2000/10/22 |