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オーディオのリフォーム

平成2年から8年間は楽器演奏からも音楽を聴く事からも全く離れていた。

けれども 平成10年の正月休み、ゆったりした気分のままに、ふと自分の昔の演奏を聴きたくなりオーディオ装置のスイッチを入れてみた。ところが長い事聴かなかったので音が出ない。それではとウォークマンにカセットテープを入れイアホンで聴いた。学生時代から始って 平成2年までずっとの記録。

聴いてみればやっぱり音楽はいい。 取あえず音楽を聴けるようにしようと思い立った。どうせやるなら徹底的に、とカートリッジからスピーカー内部まで全てに手を入れなおす計画を立てた。

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決めたテーマはキープコンセプト。修理が利くものはすべて復旧。

例をあげれば プレーヤーは完全に部品単位に分解、使い込んで表面皮膜が剥げ落ちているシャーシーを福岡の町工場で再メッキをして、もう一度モーターを組込んでからメーカーへメンテ依頼。 テクニクスの修理担当者は、こんな事は初めてです古いので部品はもうありませんが 精一杯の事をしました、と金を取らなかった。

サエクのトーンアームは錆びがどうしても落ちないので、以前にしばらく使っていたSAEに再登場願い、プレーヤーの鉛ボードの穴をその為にあけ替えた。プレーヤーシステムはこれまで音を優先して蓋を持たなかったが、レコードを演奏しない時の埃よけの為、業者を探してアクリル板の蓋を特注し、その蓋が収まり、ずれ落ちないようボードに部品を工夫して取りつけた。

プレーヤーの設置方法もいろいろ工夫を凝らし、柔と剛の組合わせにより、直ぐそばで その場飛びをしても音にほとんど影響がないまでになった。これは新築の際、オーディオシステム直下の床をコンクリートにした事も手伝っている。しかし今回それだけでは不十分だった事が分かった。

CDは実に手軽で便利だが、出てくる音の雰囲気はアナログの方が音楽的であると思うし、高音はCDより伸びる。また奏者の呼吸音など、楽音以外も拾うのだが、それがCDに比べておとなしく、気にならない。呼吸音や身じろぎの際の雑音が過度に収録されると聴く側は緊張してしまって楽しめない。オケなどがトゥッティのフォルテで始まる音楽は、いきなりパンチを食らう感じでCDは大変怖いが、レコードなら一回転手前からそれが解るので心の準備が出来て、丁度指揮者のアウフタクトの様に作用して安心出来る。これは重要なメリットと思っている。針のパチパチノイズは不可避だが、アナクロニズムと言われようと私にレコードプレーヤーは手放せない。とはいえ、CDも僅かずつ溜まっては来ている。

話がそれてしまったが、金属フレームのプレーヤーラックは錆びを落とし、ワックスを掛けた。木製のアンプラックは、あちこち穴をあけて、コードをこれまで以上に短い距離で接続出来る工夫をし、御影石のプレーヤー台さえも信号コード用の穴をあけた。加えて電源コードと信号コードを離した。

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システムを繋ぐ接点金具やコード等 小物類は新品に買い換えざるを得なかった。スピーカーコードは最短距離でアンプにつなぐ事と併せて電源コードから離すため、テラス屋根用の小型縦樋をシステム背面で宙に浮かべてセットし、その中を通したのは我ながら気に入ったアイデアだった。

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スピーカーボックスは 20余年前 自分で設計し、勤務していた会社の休みと有給休暇を利用して一週間ぶっ通しでベニア板の墨付けから塗装まで一人で製作をしたものだが、片方だけでも小振りの畳を12〜3枚重ねて立てかけた位の容積がある。持運びは力のある男二人で休みやすみ。

私のスピーカー観は<楽器に準じる大きさ>なのでこんなに馬鹿でかい。メーカーの開発担当者ならこんな配送に困るものは企画しないだろう。自作なればこそである。これはアイデアが浮かび スピーカーのコーン紙を、よりストレスなく鳴らす目的で、それまでの前面ダクト構造をやめ、箱の大きさと重さをフルに生かしてCWホーン構造に変更、裏板に表札二つ分の大きさの孔を開けて背面から低音成分を取り出し、壁伝いにぐるっと廻して前に導く、部屋の壁をもスピーカーシステムの一部として利用、その為の音道パーツを作り、中途から音が漏れない仕掛けを考えた。軽いスピーカーシステムなら自分の出す音で踊ってしまうが、これは大丈夫。

このCWホーンへの変更は成功。 大太鼓の響きがコンサートホールの壁から跳ね返ってくる音もしっかり再生するようになった。その改良には一週間の手間と わずかの材料代で済んだ。ウーファ口径は45センチだが、必要な時に必要なバランスで、伸びやかな低音が欲しいだけで、バス弾きだからといって低音マニアなのではない。

更にそれまで中高音はタンノイの小型スピーカーシステムをそのままの姿で使っていたものを、私がこの大型システムを設計した当初の計画通りに、箱から単体を取り出し、ウーファと共に自作ボックスに収めた。自作ボックスは長い間、当初設計に拘わらずタンノイに敬意を表して単にウーファの箱としてしか使って来なかった。

箱の塗装落しと再塗装、前面ネットの枠ぐるみの作り替えもした。ネットは手芸品店で薄い洋服地を求めたが、女性ばかりの店に入るにはちょっと勇気が要った。悪い事に音楽仲間の女性にその店で出会ってしまった。<いやぁ、手芸が趣味で>と愚にもつかない冗談が口から出て、店を後にしてから悔んだ。

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アンプ類は全部保守点検に出したが、二つあるメインアンプのうち低音用は修理に50万円位掛ります との事で、これは別にそれより安くあがる中古品を購入。

中高音用のメインアンプは 今回チャンネルデバイダーを介さずフルレンジ扱いにしてストレートに繋いでみた(低域用アンプのみチャンデバ経由)が、比較してみて音をクリアにするためには良かったようだ。 それは同時に定位の為には改悪につながると思い、タンノイとウーファは許せる範囲で接近させた。CWホーン構造やカートリッジの特性にも依るが以前のベストな状態に比べ、ピンポイントの定位感が若干薄れたのは確かだ。

プリアンプは修理に出したものの R/Lアンバランスのまま。何せマッキントッシュC−26、古い。でも バランスコントロールをうんと回してやれば何とかなる、これは余り気にしないで使っている。

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レコードラックやバススタンドも自作品だが、スピーカーボックスと同じく塗装をサンドペーパーで落し再塗装した。ついでに1/4世紀使った応接用のソファを買い換え、応接台は自分で設計して木工房で製作して貰った。また室内にこもる余分の低音を吸収する為のダンボール箱を幾つか目立たないように配置した。

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このように アイデアを暖めては実行 を繰返し、完成までに8ヶ月を要してしまった。手を入れた個所を数えたら、プレーヤーで15箇所/アンプで8箇所/スピーカーで11箇所/配線で5箇所/環境で12箇所になった。

しばらくステレオに接していないと 却って新鮮なアイデアが浮かぶものだ.8ヶ月間、図面引き/金工/木工/塗装工/電気工と十分楽しんだ。 その間客間兼音楽室は足の踏み場もなかった。

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再生能力は当然向上したが、以前とは違って <それがどうした>との醒めた気持も混じり、その分健康的な考えになったかな とも考えた。予算は極力使わない方針で取り組んだが、それでもDIY店には3日にあげず通って売上げに協力をしたし、中古とは言えメインアンプ代金もあって予想を少し上回った。

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私のオーディオ観を少しご紹介すると、実は第一番に定位、音質はクリアで柔らかめなもの(ピアノも聴くがやはり弦楽器が中心)、周波数特性は伸び切る必要はないが詰まった感じのないもの、一言でいえば、目指すのはよいホールの中ほどで聴く音と言えようか。レーベルで言えばドイツグラモフォン的な音が好きだ。デッカのオーディオライクな音ではない。今回定位については理想を求めなかったが、これは<…ながら聴き>が主体になり、気分を集中して聴く事が減ったので許せてしまった。

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一連のメンテ/リフォームが終了した秋口、昔のように音楽を聴きながら、やがて気持は再び楽器演奏へ戻って行く事になる。

2001/5/27

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