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オーディオ遍歴

ゆっくり音楽を聴いてみたい と思うようになったのは大学に入ってから。その為にはまず音楽再生装置を手に入れなければならない。

レコードは値段が高すぎるのでFMを聴く事にし、はやり初めのトランジスタ製アンプでFMチューナー付きを買った。そこではや資金が尽き スピーカーは 実家にあった古いコンソール型ステレオのスピーカーを外して下宿に持って行き、ダンボール箱の一面を丸くくりぬいてスピーカーユニットを収めた。これで結構満足だった。二間続きの下宿の相方は一年後輩の同じクラブ員、お互い遠慮することはなかった。

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自分で稼ぐようになってから、 ぼちぼち機械を買い集めステレオらしくなった。パンチングメタルで覆われた 小さい箱の奥から真空管のぼーっとした灯りが見えて気に入っていた。卒業後10年間自宅で楽器を弾く以外まとまった音楽活動はしなかったが、その間レコードは良く聴いた。

就職先の会社では 近畿一円を駆け回る営業だったので出張がとても多く、一計を案じ旅費を節約するために出張先では社用車のバンの後部荷台にダンボールを敷いて、毛布を封筒の様に縫った寝袋にくるまり、帰ってくるとそのままレコード店に直行した。浮かした金でレコードが2~3枚買えた。 ステレオもどんどんグレードアップした。だから結婚生活は貧乏だった。若い家内はしおらしく私にあまり苦情を差し挟まなかった。

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会社を辞め、やがて狭いながら家を新築した。自分自身の設計だった。 独立したオーディオルームを客間兼用としてプランに含めた。音響学の本を読み、室内はそれと解らない隠れた部分に自分でも手間暇を掛けた。大工さんは私の説明する下地構造の意味を理解したかどうか、随分と迷惑な事だったろう。説明しても生半可の理解では却って悪い結果が出る。ついて回るしかなかった。

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しかし 完成後何年かして オーディオそのものに対して気持が吹っ切れた。どこまでやっても切りがない。 実は手を掛けるほど良く鳴り、例えるならコンサートホールの横のドアから頭を突っ込んで音楽を聴く状態から、中へ入って上席へ移動する程の差はあるのだが、もうこれ以上金をつぎ込みたくない。コンサートホールの隅っこの音でも良いではないか。

これまで レコードや部屋を別にしても再生装置にはかなり注ぎ込んだが、もう卒業だ。こんな気持になったのは世にCDがはやる寸前、平成になったばかりの頃。でも買った日付と店の名前を書きこんだレコード約800枚は今後とも聴き続け、私の宝物であり続けるだろう。

2000/10/22

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