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トップページ>工房>コントラバス奏者の工作室>コントラバス椅子の製作>このページ5号改コントラバス椅子■ バス椅子の変遷その7はじめに
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昨年9月,折り畳みパイプ椅子をバス椅子に使うのを考え付いたのは私にとって大冒険だったが,使い始めて半年以上経った今,大筋で訂正する必要を感じていない.最後尾でご説明する頭が痛い問題点一つを除いてはこのまま使い続ける十分な予感がある. この椅子を使用しているうちに小さい改良アイデアが2点出て来たので今回改造して5号改と名づけた.改良点は木製踏み板をなくしたこと,エンドピンレスト位置を簡単に前後移動出来る構造にしたこと.画像を見てもお判りのようにもうバス椅子というよりは単なる紐付きエンドピンレストと言う方が当たっているのだが,1985年頃の第一号から始まった20年余りの長いバス椅子製作の流れの中で,やっぱり私にはバス椅子として見えるのである. まずはバス椅子全景のご紹介.パイプ椅子はごく一般的で格別の特徴がないので画面からはみ出ている.実は椅子はパイプ製でなくともピアノチェアでも家庭の食堂椅子でもフィット感があれば何でも良い.この仕掛けはどのような脚にも取り付くが,自宅練習と会場での演奏を同じ感覚で出来る為に私は自宅でも折り畳みパイプ椅子を使っている. ところで,これまで作って来た私のバス椅子を知らずにいきなりこの画像を目にされた方の為にご説明すると,私の構え方はオーケストラのバイオリンなど他楽器奏者と同じようにステージ床のパイプ椅子に座りその前方床にエンドピンを突いてフレンチ弓で演奏する.楽器はかなり寝るのでしっかりと楽器を受け止める構造のエンドピンレストは不可欠.この演奏スタイルの為の譜面台は”コントラバス座奏用譜面台”として別にコンテンツを設けている. 次の画像は製作に使う材料を並べたもの.1はエンドピン位置を前後させる為のテープ状の調節紐.幅は15ミリでバックル付.2はパイプ椅子脚に巻きつけて止める幅20ミリのマジックテープ.3は調節紐がワイヤーに引っ張られて痛むのを防止する直径6ミリの樹脂パイプ.4は直径1.5ミリの柔軟なステンレスワイヤー,購入したのは1.2mほど.5はそのステンレスワイヤーを結わえる為に使うクランプカンという中空アルミ部品. 左は3番目の樹脂パイプ拡大画像.直径は6ミリ,穴の径は4ミリ.右は5番目のクランプカン拡大画像. ステンレスワイヤーの終端処理.クランプカンを使ってかしめてある.このクランプカンはちょっと大きいものを使った.なお,かしめには別枠画像のようなかしめ圧着ペンチを使う. パイプ椅子へ巻きつけるマジックテープ部品を作り終えたところ.椅子へ巻き付けるところは上下でマジックテープの長さをこのように変えた方が固定作業が楽.マジックテープは6ミリの樹脂パイプを巻き込んで折り返し,矢印の箇所をミシンで縫った.ステンレスワイヤーを樹脂パイプの穴に通してクランプカンで輪にする. 最初の全体画像で言えば中央部に当たる箇所.ステンレスワイヤーをこの部分で中継ぎして2箇所でかしめた,その中央部に調節紐を回したが,かしめたクランプカンに挟まれているので調節紐がステンレスワイヤーを伝ってさまようのを防止出来る.調節紐は矢印部分の広い面積で強力接着したので挟み込んだ樹脂パイプもずれない. バックルに調節紐を通したところ.バックルはどの位置でも調節紐を止めるので楽器と体の関係を微妙に調節出来る. エンドピンレスト側のステンレスワイヤーの処理.ステンレスワイヤーは細く,エンドピンレストの穴を傷める心配があるので,画像では判りにくいが電線の被覆ビニールを短く切り,中の電線を抜き去って穴に差し込んでいる.エンドピンレストの足裏には発泡ゴム板とフェルトを接着している.これは楽器をステージ床から浮かせた方が音が良い,という情報に基づいた処置.これについては後日じっくりとテストする機会を作ろうと思っている. エンドピンレスト部分の完成画像.ステンレスワイヤーを中に通した樹脂パイプが見える. パイプ椅子に固定する寸前の様子.マジックテープの余長に長短をつけた理由がこれからお判りと思う. これで演奏の準備が整った.このようなパイプ椅子ではなくて通常の木製ピアノチェアの脚にも取り付けに問題はない. これまでバス椅子の設計コンセプトで私は携帯性を常に重要視して来た.その意味でステージや練習場所に必ず備えられているパイプ椅子(ラッキーな場合はピアノチェア)を使うのは,自宅から運搬する椅子の容積と重量がゼロであるのと同じ意味であってこれ以上は望めない究極の策.更に良いことには楽器のエンドピンを固定する道具がこの5号改では下のキッチンスケールが示すように全重量わずか90グラム,紐をくるくる巻きつければ容積にしてデジタルチューナーくらいでバスカバーの小さい方のポケットに入れておつりが来る程度.この5号改で携帯性は極限に来たと言えるだろう. またエンドピン位置は過去私のアイデアだと2〜3センチ刻みにしか変えられなかったが,今回バックル使用によって無段調節出来るという便利さを獲得した.これが完成して以来短い間に3種類のパイプ椅子で使用してみて判った事には,座面高さは同じでも脚の出寸法が同じ椅子はない.かなり調節する必要があったので無段調節機能は楽器の演奏感を同一に保つ重要なメリットのようだ. この5号改バス椅子は座奏バシストの抱える椅子問題のひとつの解決法になると思うのだが如何だろうか.但しその為には平床でチェロのような構え方を必要とし,それは現在バス界の一般的”常識”からは外れている.でもやって見れば私にとっては何という事ではなかった.私はフレンチ弓以外試してはいないが,ジャーマン弓でも同じように問題なく使えるのではないだろうか. 室内楽など少人数の舞台ではこの構え方なら合奏の半円形の中に入ってアイコンタクトを共有しながら演奏出来るメリットは大きい.バスと言えども,もう緊密なアンサンブルの埒外に取り残されることはない.目配せするリーダーの負担もうんと減る. 最後にこのバス椅子の問題点を申し上げる. 前者は防御出来る.座面にクッションを常に使用すること.そのクッションは滑りにくい材質を使うこと.これで第一の関門はくぐり抜けることが出来る.この策の副次効果としては椅子パイプが座面前縁でむき出しになっていても楽器裏板が傷むのを防げること.下の画像の左は手芸品店で買ったバッグクロスという商品名で90センチ×50センチの合成皮革(ハンドバッグを作る材料として売っていた)を二つに折ってミシンで縫い終えたところ.慎重に縫ったのであまり歪んでいない.シルバーグレーに見えるのは合成皮革の裏地. 出来上がったクッションを椅子に置いたところ.椅子は家で食卓に使っている木製椅子を使って見た.脚に巻き付けるマジックテープの寸法が足りないので継ぎ足している.又エンドピンをぐっと手前に手繰り寄せたのでバックルから先の調節紐が20センチ以上も余っている. 椅子ごと転倒しない手立てはやっかいだ.パイプ椅子は軽いし安定性が悪い.前脚を横広に拡張する働きを持つ補助脚を取り付け出来ればベストなのだが,この材質と構造を頭の中で描いては消しを何度繰り返した事だろう.今のところステージでも使える現実的で操作が簡単しかもスマートなアイデアにたどり着いてはいない.楽器の後ろが通路になっている狭い会場では従来通り直接床に置いた方が安全だろう. 一点だけコメントを加えておくと,コントラバスは普通の体格の人が健康を保ちつつ長年にわたって毎日演奏出来るには限界に近い大きさではないかと思う.立奏ならなおさらその演奏姿勢は自然とは言いがたい.出来るだけ医学的に無理がなく楽な姿勢で弾くのが望ましいはずである.そちら方面の知識はないけれども少なくとも立奏とホール備え付けの一般的なバス椅子に座って弾くのとでは画然とした差があるし,背もたれのない普通の座面高さでの座奏と背中を預けながらの座奏との比較でも楽器が大きいだけに疲れが大きく違う.既成概念から見れば承服出来ない奇異なスタイル,でもやって見ればもうそこから離れられない楽な演奏姿勢. 2007年6月2日 追記 追記2 |