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第5号コントラバス椅子

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■ バス椅子の変遷その6
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4号改バス椅子
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第5号バス椅子に言及する前に4号改に触れておく.何故なら5号は4号を改造する過程で出来上がったとも言えるからである.

4年間使って来た4号バス椅子に大きな不満はなかった.しかしバス椅子に背もたれがあれば良いのではないだろうかとはその前の3号バス椅子を製作した2000年頃からずっと考えていた.今年8月に4号座面の経年劣化を改善しようと思い立ったついでに長年の課題だった背もたれを付けてみようといよいよ思考実験に取り掛かり,直ぐに座椅子のパイプを利用することを考えついた.
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座椅子を骨だけにして
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バス椅子キャリーバッグに収まるよう,その寸法に合わせて骨をカット,それを補強してから木部をえぐって嵌め込んだ.最初は背もたれを高くした結果,尻を置く面への寸法配分が少な過ぎたので座椅子を買いなおして再スタート.
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背当て板を取り付ける.これは後になって座面の前後寸法を少しでも稼ぐ為,ベニア背当て板を黒い骨の背面から取り付けてその前面にスポンジを貼り付けた.
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この4号改完成写真は後ほどご紹介する.


第5号バス椅子の詳細
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前出の4号改は4号用のバス椅子キャリーバッグに何とか詰め込むことが出来たが,然し短くカットしたとは言え鉄パイプを入れた為に重くなり,その上に尻の安定感を求めて座面に低反発ゴムを堅めに詰め込んだのでバッグはかさ張ってふくれてしまった.更に作ってみて解った事だが,キャリーバッグに収納する事情から座面と背もたれの合計寸法は52センチ以内でなければならない,という制約は座り心地を損なうほどのものである事が判明した.

この4号改が持ついくつかのメリットをもってしても,逆のデメリットを大幅に上回る事が困難と判断したので,4号を離れて全くの新天地を探らざるを得なくなった.

そもそも,椅子としての性能を求めて行けば重く大きくならざるを得ず,それは私のコンセプトのうちで重要な位置を占める”軽く小さく作る”という路線に反する.振り返って考えれば4号バス椅子の大きさ重さは私の許容範囲の限界であって,4号改はそれからはみ出てしまったようだ.

さて,それならどうしたら良いか,9月9日自宅での練習を終え布団の中であれこれ頭を巡らせて一つ考えが浮かんだ.どこにでもある折畳みパイプ椅子ならどうだろう?それでバスを演奏出来るだろうか.OKならもう椅子を自宅から持ち運ぶことはなくなる.肝心な事には背もたれはちゃんと付いている.やってみるべし.翌日は練習日であり自宅で製作する時間の余裕がない.ノコギリと錐とねじ回しを車に積み家を出てDIY店で必要な材料を買い,その駐車場の一角で前の晩に考えたように作ってそのまま練習場へ直行した.その日は腹を決めてバス椅子を携行しなかったので,もし問題があれば立奏するつもりだった.練習場のパイプ椅子に取り付け,バスを構えて見ては何度か紐の長さを調節してから演奏したがどうやら思った通りの結果が出たようだ.

ステージでの様子.板はパイプ椅子の足で押さえつけられているのでエンドピンレストは滑り出さない.
第5号バス椅子1

作った試作品の抱える問題は構造が単純なだけに余りなくて,会場で休憩時間や本番を待つ間パイプ椅子に寄り掛からせた楽器が何かの拍子に滑り落ちたり,椅子自体が転倒する可能性を減らす事くらいだった.実は試行した最初の日に椅子から滑ってしまったのだ.

それへの対応として;
1)幅をパイプ椅子の幅より少し広めにして横転を防ぐ
2)座布団を使い,それが楽器に触れる位置に滑り止めのシートを貼り付ける.パイプ椅子によっては座面の先端にも裸のパイプが回っていて楽器を傷めるかもしれないので座布団は必要と考えた.
3)決定的な解決策としては板がパイプ椅子の脚を挟み込んで固定してしまえば良いのだが,これにはまだうまい案が浮かんでこない.

構造はあまりに簡単なので製作過程の画像は端折る.エンドピンレストを固定する為の部品は無粋ながら踏み板と呼ぼうか.もう一つは座布団,これも無粋にも座布団というしかない.

踏み板を椅子の後ろから見た画像. エンドピンレストの紐は今回樹脂糸をより合わせた紐から極細のスチールをより合わせたものに変更した.理由は経年変化による伸びがないと想像されるから.
第5号バス椅子2

エンドピンレストの紐を留めているのは踏み板にねじ込んだ小さいヒートンと二重リング.黒いくさりをつけているのはパイプ椅子の足の張り出し方が椅子メーカーによって微妙に異なるかも知れないのでエンドピンレスト位置の調節をする為.
第5号バス椅子3

第5号バス椅子4

第5号バス椅子5

第5号バス椅子6

踏み板は弓ケースと一緒にベースカバーに収める事が出来るようにと考えて断面形状を決めた
第5号バス椅子7

下の図のうち左の図面は上に掲げた写真にあるようにパイプ椅子の足が下駄状につながっている場合.これが一般的な折畳みパイプ椅子だが,右の図面のように右の足同士,左の足同士がつながっているケースもあるかもしれない.その場合はエンドピンレストの紐を長くしなければならない.私はそれに備えて鎖を60センチ弱用意している.
第5号バス椅子8

第5号バス椅子のもう一つの部品は座布団.薄い低反発ゴムの座布団をDIY店のカー用品コーナーで見つけた.使うのは2枚だが,その理由は会場にある折畳みパイプ椅子の座面高さを座布団の数で調節する必要があるかも知れない用心.演奏中にお互いがずれない為にマジックテープを接着した.
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座布団の表先端には置いた楽器がずれ落ちない用心の滑り止めシートを貼り付けている.
第5号バス椅子9

座布団は運搬時にはベースカバーの緩衝材として使っている.弓ポケットには弓と踏み板を互いにくくりつけて収める.
第5号バス椅子10

これまでに作ったバス椅子の変遷画像.左から順番に新らしいバージョンになるが左端が第2号,左から三つ目が4号改,右端がこのたびの第5号.第一号バス椅子は既にないが,座面は2号より高く私の股下寸法だった.機能とデザインと材質の総合点で一番気に入っているのは左から2番目の第3号,頭をしっかり使った上に製作するのに時間が掛かったのは第4号,外観だけで言えば残念ながら最新式の第5号が一番安っぽくみすぼらしい.
第5号バス椅子11

第5号バス椅子の使用感
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上半身を背もたれに預けると言う長い間の懸案を一般的な折畳みパイプ椅子を使うことで果たした.これまで座面がそれほど高くない椅子を平床に置いて演奏するというスタイルを続けてきた経歴がなかったなら考え付かないような破天荒な演奏スタイルではある.この新しい状況で私にフィットすると思われる楽器セッティングは多分今後変化してゆくだろううが,今のところの姿勢を述べる.

先ず私の感覚から言うと,私の胃は楽器の右肩と椅子の背もたれの間に挟まれていて,従来の姿勢では楽器は両膝に乗っているだけだったからそれに比べてわずかに窮屈な感じは受ける.しかし一方から見れば楽器と体の位置関係が演奏につれて崩れる恐れがないというメリットもあるようで,その証拠として先日のコンサートの全ステージで自分の演奏のアップを撮影し続けたが,弓の通る道は意図して外す以外では駒から10センチ〜13センチあたりからほとんど狂わなかった.別にそれを意識して演奏した訳でもなかったが.

背もたれに助けられて背筋は伸び,筋肉にはその姿勢を維持する為の負担が掛かることもない.従来から上半身は楽器を支える役目からフリーで楽器に触れることがなかったけれども,それでも背筋を伸ばし続ける為と体に余る大きな楽器であるバスを扱うことに筋力を使っていた事が背もたれを使った時の疲れのなさと引き較べて解る.一方深い前かがみが出来ないので譜面台は”拝み倒し”が使用出来なくなってしまい,通常の譜面台を楽器の正面ではなく右横に置いて使っている.楽譜の高さは当然一般的な楽器奏者と変わらない.

このように良い姿勢が保てるのに疲れないこと,弓の道が安定することなどで第5号バス椅子は高得点で合格した.既に4号改は屋根裏部屋へ上げてしまっており,今後使うことはないだろうと思う.ちょうど初めてフレンチ弓を持った時,今後これを使い続けるだろうと確信したのと似た確信の仕方だ.
第5号バス椅子12

最後に姿勢を詳しく述べる.
座ったときの座面高さは床から尻まで約45センチ.第4号バス椅子は通常の椅子として見れば高い座面だな,という印象だったからそれから比べると今回座面は画然と下がった.私の顔を左へ向けるとあごは第4ポジションを押さえる.楽器のくびれ左上端の出っ張りは左膝から15センチの位置に引っ掛かっていてそこが楽器上半身の重さの7割を担っている感じ.右ふとももには右の出っ張りが触れているという程度.楽器のネックから少し下の右肩は私の胃の上に触っていてそこが残りの重さの3割を担っている.左足は若干踏み出しているが,右足は自然に床を踏んでいるか又は膝を強く曲げて足を引いている.右足の位置はまだ決めかねている.前述の自分自身のビデオを見ると,それまでの演奏で取り入れていたローポジションを押さえる時に体を左に捻る動作はなく,顔/肩は正面を向いたままで演奏しているようだ.

このように,これまでこのHPで書いて来た私の奏法/構え方は2006年重陽の節句の日,寝床の中での空想から大きく変化することになった.

2006年10月21日


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