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コントラバスの駒削り

前小文では駒の位置調整をしたが、この小文では一歩進んで駒の加工をする。駒の加工は奏者の演奏ジャンルや奏法と密接なつながりがあるのでこれによって初めて自分の楽器になったという気持ちを持てると思う。ぎりぎりの低い弦高調整が好きな人は失敗と裏腹、時間を掛けてぼちぼち進めよう。私はG弦を失敗し掛かっており、強く弾けばビビリが始まってしまうが、逆にDAE弦は未だ余地を残している。

この駒削り作業では魂柱の転倒を覚悟しなければならない。次の小文”魂柱立て”とワンセットで読んで頂きたい。全弦を緩めるならテールピースはタオルなどで巻いて表面板を傷つけないようにしておこう。

弦高を低くしたい時に、どんな高さなら気持ちよく押さえられてしかもビビらないかは、自分で調整出来る強みで時間を掛けてテストしながら追い込んで行く。素人仕事は決してマイナスイメージばかりではない。職人さんのように限られた時間内に答えを出す必要はなく、納得の行くまで何度でも時間を掛けて(それどころか期間を掛けて)作業出来るという圧倒的なメリットがあるのだ。ぎりぎりの高さを好む人なら高さの違う駒を二つ用意して気候による弦高の変化に備えるのは良い事だ。駒交換を自分でするならビビリを感じた時にすぐさま実行出来る。

ここで弦高と連動している諸要件を述べる。弦高は単に駒自身の高さだけに関連しているのではない。その他には
魂柱の高さ寸法、
魂柱の立っている位置、
駒の立っている位置/立ち方、
駒足裏の削り方の良否、
指板の断面アールと駒頭のアールがちょうど程よく重なる位置(左右の)に駒が立っているか、
駒溝の深さ、
上駒溝の深さ、
などが関係し、それぞれがベストな状態であってそれらを変更するつもりがない事を前提条件にして、或いはそれらをちきんと調整した後になって、ぎりぎりに追い込めることに留意しよう。私はこの点に気付く為に駒一個を無駄にしなければならなかった。

駒足裏は弦を正しい音程に張った時に表面板に密着している必要がある。もし駒をちゃんとセットしたにも拘わらず密着せずに隙間があれば足裏の削りに問題がある。足裏削りについて実は私なりの試案があったのだが、素人が削るにはハードルが高くてこの提案は取り下げた。ハードルとは駒足の広がりはフリーの時と弦の圧力を掛けた時には微妙に異なる問題と、もう一つは駒にサンドペーパーを掛けると駒本来の音が変質してしまう問題。この音の変化を実際に知った時はびっくりした。なのでここは潔く楽器職人さんにちゃんとナイフで削って貰う解決法をお奨めしておく。

この他に指板の状態も関係してくるが、指板削りも私の手に負えるものではなく、多分素人の散髪と一緒で作業のまずさを訂正しようとして益々救いようのない深みにはまるに違いないと思っている。

弦高を数値的に掴まえるにはノギスを使う。指板の下端位置でノギスを当てて指板表面と弦トップの間を画像のようにして測る。あるバス教則本に載っていた数値はG弦から順に8、9、10、11ミリと言う事だった。これはその教則本を書いたプロが彼の弾き方で彼の楽器を演奏する場合であって、参考にはなるがそれに盲従する必要はない。弦によって、弾き方によって、指板の状態によってベストな高さは色々ではないだろうか。私はこの教則本からG弦からE弦に行くほど弦高が必要になるものだ、とだけ理解している。然し迷っている時には数字に従ってみるのも良いだろう。

*

駒をどのように削るのか。
弦の直径をノギスで確認してから弦の直径の丸棒ヤスリを買って使う。つまり4弦バスで4本必要。ヤスリはテーパーになっているので作業勘の良い人なら買うのは二本だけでも良いかも知れない。目的の弦を一本だけ緩めて溝から外してずらせ、その溝にナイフで少し小さい溝を掘る。だいたい掘れたら丸棒ヤスリを<軽く>掛ける。作業は一度に深く掘らず、少しずつ掘っては弦を張って弓やピチカートで試奏してみる。ピチカートや弓奏を自分が弾かない程の強さでやってみてびびり始めたらそこでストップ。但し一本ずつ別々にぎりぎりまで追い込ん行かず、隣り合う弦同士の高さバランスも見ながら調整を進める。特にEA弦の間がカクンと折れている指板ではD弦の高さ調整が微妙になる傾向がある。掘り終われば弦方向(上下方向)に引っかかりが出来ないように溝の前後(入り口出口)は丸めに仕上げその溝に鉛筆のカーボンをつけておくか、溝にティンパニの皮を敷いてカーボンを付ける。(前出)

溝を削り終われば駒頭も同様に削らなければならない。溝に乗っている弦を指で触っても判断出来るが、下図のような状態になるように頭をナイフで削る。これを怠ると高く残る駒頭がちょうどミュートのような働きをするはずだ。この削りは溝堀りと違って駒を楽器から外して行った方が間違いを起こしにくいと思う。

駒の溝掘り作業を終えてもローポジションを弾く時に弦が高いと感じるなら上駒(ナット)も削らなければならない。上駒溝を掘る要領は駒溝と同じだがもっと微妙、削りすぎないように。もし削り過ぎたら楽器工房で上駒を交換して貰う。上駒は楽器本体のように見えるが、実は小さい交換部品だ。

弦を太いものに交換した時は溝の広さをチェックすることも忘れないようにしよう。多分溝を広げなければならないだろう。広げる時は弦同士の間隔も意識しながらにしよう。微妙に間隔が違う事があるので、少しでも訂正するチャンスだ。

駒の厚みも要チェック。
溝を掘り進めば相対的に駒厚が増える。そこで駒をナイフで薄くする。削るのは表側だけで裏側(下の面)には手をつけない。余談だが、裏も表と同じように削った駒も見掛ける。そもそも駒を薄くするのに裏から削ってはならないのは何の為だろう。直角定規を当てても直立が解りにくいから? まさか。では何故裏側を直立させると良いのだろうか。ここを私は理解出来ていない。削るのはサンドペーパーという訳には行かないらしい。でもスクレーパーで薄く削ぐのは容易ではないし駒表面のどこをどの程度削れば良いか、どこを残したままにするのかは出て来る音質と密接に関わるので(その作業をつぶさに見て驚いてしまった)のでその知識の集積がないならやっぱりこれも楽器職人さんにお任せしよう。でも尋ねて見てその職人さんもサンドペーパーを使うのなら困ってしまう。その店に任せて大丈夫だろうか。

ノギスを指板下端で使う。初めて使うなら取扱説明書を読まねばならないが、1/10ミリまで計測する事が出来る。
コントラバスの駒調整1

弦が溝から半分以上出るのを目処にして駒の頭を削る。弦を締めたり緩めたりする際に巻き線が引っ掛からないように溝はわずかに角を落としておく。
コントラバスの駒調整2

指板のE弦D弦の間に角がついているものはD弦の高さに気を付けなければ弾きづらくなる。
コントラバスの駒調整3

2004/1/3

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