トップページ>バシスト控室>コントラバスの構え方>このページ5号改コントラバス椅子の構え方 ■ 構え方の変遷その3
■はじめに このHPのあちこちで述べている事であるが,恥ずかしい事に私は演奏がまるで下手糞で系統立てた長期間の訓練を受けていない.そんな私がバスの演奏に関連する事を述べてどれだけ意味があるのか,それを考えれば正直言ってこんなコンテンツを加えて行く気持ちは萎えるのだが,でもこの記事をきっかけに素晴らしいアイデアを湧かせて頂ける方が出てくるかも知れないので,それを期待しつつ上梓する.良いアイデアを思いついた方は是非私にも教えて頂きたい.
■これまでのバス椅子 これまで椅子は自作とその改造を繰り返したのだが,その結果20年前に私の股下寸法ちょうどから出発したステージ床に対する座面高さはどんどん下がり続け,2002年に作った4号バス椅子では両足を直接ステージ床に置く構え方にしたので普通の椅子より少し高いという程度までに下がって来ていた.
■背もたれが欲しい,しかし携帯性は失いたくない 第5号からは市販パイプ椅子を採用したが,理由は背もたれが欲しかった事.先ず背もたれ付きの椅子を”4号改バス椅子”として自作して見たところ,携帯性が私の許容範囲を超えることが解った.携帯性は私にとって大事なポイントなので代案を探しあぐねたが,ある夜中布団の中で,もし折り畳みパイプ椅子で良いのならどの会場にもあるので自宅から運搬する必要がない,と思い当たった.使って見ると予想したほどの違和感がなく,背もたれに背中を預ける安心感安定感は大きいようだ.私が作って来た椅子に比べて明らかに都合の良いものならこれまでのコンセプトに拘ることはない.
■この構え方への準備 2000年に座奏/フレンチ弓という世界を知り衝撃を受け,同時に自分に合うはずだと確信し,その後は真っ直ぐにこの路線を進んだ.
普通のパイプ椅子を使って見たらどうだろうと思った時には既に座面は一般常識よりはかなり低くなっていたが,それがパイプ椅子を平床で使う(椅子を台に乗せないで楽器と同じ床に置く)という試みに進む下準備となっていた.その背景にはフランクフルト市立オペラ首席コントラバス奏者野田一郎氏のアドバイスを受けたことが大きく作用している.もし座面が4号より少しばかり高めの足台付き3号バス椅子を使っていた2002年当時にいきなり折畳みパイプ椅子を使うこの構え方にトライしたならば,楽器が体にのしかかって来るような圧迫感に耐えられず断念したかも知れない.
こんな構え方の為に教則本はコメントしていないから弾いて心地よい正解にいきなりはたどりつけるはずがない.けれども何となく感じる”良い予感”だけを頼りにしてあれこれ試みて来た.私にとって”良い予感”は上で書いたように”フレンチ弓と座奏”にそれを感じて成功して以来頼りにしている感覚だ.
■背もたれのもたらした変化 背中を背もたれに預けるスタイルは私に次のような効果をもたらした.それまでローポジションを使うときは指板を押さえやすくする為に体をわずかに左に開いていたが,今回それは体を背もたれと楽器に挟まれてやりづらくなった.そもそも座奏を取り入れれば第一第二ポジションを使用する頻度は落ちる傾向がある.背もたれの使用はその傾向を加速し,そのあたりのポジションはほとんど放棄して第三ポジションから上を使う事で体をひねらない姿勢を目指すことになり,ポジション練習に励んだ.主に第三ポジションから第六ポジションを使用すれば両肩がこれまでと比較して水平に近くなるので自然な感じになった.今のところこの構え方にたどり着けて良かった,とさまざまな偶然の積み重なりが導いてくれたこの世界に満足している.
■諸元 では,以下にパイプ椅子を使った私の構え方のスペックをご紹介する.
体と楽器の諸元
| 部位
|
数値
|
| 身長
|
172cm
|
| 楽器の全長(エンドピン除く)
|
181cm
|
| 弦長
|
104.5cm
|
| エンドピン長(側板の底からエンドピン先までの距離)
|
16cm
|
体と楽器が触れ合う部位
| 下図の記号
|
楽器の部位
|
体の部位
|
| A
|
ネック基部
|
左乳首
|
| B
|
楽器の肩
|
みぞおちから肝臓にかけて
|
| C
|
Cカーブの上コーナー
|
右足の付け根屈曲点から13センチ
|
| D
|
Cカーブの下コーナー
|
膝関節内側下部
|
| E
|
Cカーブの上コーナー
|
左足の付け根屈曲点から25センチ
|
なお,下図の人体は作図によるので実際の触れ合う位置は微妙に違うことをお許し願いたい.自分の構え方を写真に撮ってから描いたのではなく想像がかなり入っている.楽器の向きについて言えば,上の表からCカーブ上部が太ももに触る位置が右左でかなりズレているし下の画像の構え方を見ても楽器は弓を迎える為にかなり右を向いていると想像されるかも知れないが,実際は正面からこころもち右を向いているに過ぎない.その楽器の向きはBとEによって安定的に固定される.

比較の為にチェロの構え方をご紹介する.上のコントラバスの構え方は少し高い位置から見下ろす視点だが,このチェロの構え方図はほとんど胸の正面からの視点であることに留意願いたい.
チェロの構え方を一見すればコントラバスと比較して自然で楽であろうと想像される.実際にチェロを触った事がないので本当の事は解らないが,それにしてもコントラバスは身に余る大きさだ.このチェロの図はヴィクター/セイザー著”新しいチェロ奏法”にあった図を模写したものである.ただし色付きライン3本は書き加えた.音楽の友社のこの本はバス奏者にも参考になるので一読をお勧めする.

次の図はエンドピン位置のご説明.構え方は背もたれに背中を預けるのでエンドピン位置は背もたれ直下からの距離で表した.その位置からエンドピン先端まで110センチである.

次は参考画像で歯科医師が使っている椅子.作業用椅子の座面は一般的にこのように膝に向かって低くなる方が具合が良い.ところが折り畳みパイプ椅子はこれと逆の勾配が付いている.私は会場備え付けの椅子を使う前提なので椅子の改造は手をつける事が出来ない.座布団を工夫すれば勾配改良は出来るのだが,私の太もも開脚角度は90度弱であり,普通のきちんとした座り方に比べて尻と太もも裏側が座面に接触する前後寸法が短いのでこの座面勾配は大きく悪影響を及ぼさないのではないかと考えて今回は改良をスキップした.

体感的な位置関係
| 場所
|
内容
|
| 両手の指先
|
背もたれに背中を預けてフリーの両手を自然に伸ばして指先を合わせれば駒の手前10センチあたりの弦上に来る
|
| 左手の指先
|
左手だけを自然に伸ばせば指先は駒の頭に触れる
|
| 両肩のライン
|
第三ポジションあたり以上なら演奏中に平行を保つ
|
| 太ももの開脚角度
|
およそ90度弱
|
| 楽器重量の分担
|
胸(=背もたれ)で楽器重量の半分強を,両太ももで残りの半分弱を支えている感じ.以前の背もたれなし椅子では全重量を太ももだけで支えていた
|
| 構えたまま頬を指板に寄せる
|
口とアゴの中間点が第三ポジションに来る
|
| 同上
|
左耳の下部が第二ポジションに来る
|
| 右腕
|
弓の操作中に楽器に触れる事はない
|
| 視線の先
|
真正面に駒のA線溝が見える
|
■問題点 一番の問題点は,Cカーブ上部が太ももに食い込むこと.それを軽減する為に,倒れ掛かってくる楽器の重量を主に胸で(結局は背もたれで)支えている.私の楽器はネック基部(裏板上部)が薄くなっていないので実はこれも楽とは言えない.そこで別珍の布を15センチ×30センチの袋にし,その中に厚さ2ミリのゴムシートをカーペット用下敷きマット2枚で挟み,合わせて3重にして入れた.余分の広さは楽器の汚れ取りに使うつもり.なお,綴じ込む材質はたまたま手持ちのものを使ったが,痛くないだけでなく,楽器を支えているという実感が太ももに伝わって来る程度の薄さも必要であるようだ.

また,正面から見て楽器上部が右に傾いているが,その為だろうか弓の通り道が上下にぶれる事がある.その傾向はG弦では小さいがE弦で大きい.とはいえコツをちゃんと掴んで体得すれば修正出来ると思っている.
■この構え方の今後 平床でパイプ椅子に座る構え方になってやがて10ヶ月を経過する.椅子の最新スペックは別コンテンツの”5号改コントラバス椅子”でご紹介しているが,今後細かい部分でスペックの変更はあっても基本路線を見直ししなければならない時期が来る予感はない.構え方にしても将来は予測が付かないがこちらも大きくは変わらないような気がする.とは言え一人で思いつく事には限界がある.まして下手なアマチュアがすることだ.
これが色々なコントラバスの構え方の内の1変形としてささやかながら認知されればさまざまな人の知恵が加わる事だろう.それを期待したい.
■追記 1) この小文を脱稿した今日,TVで日本人コントラバシストがここで述べている方法とよく似た構え方でオーケストラに加わっているのを見掛けた.独奏ではないのでどのような譜面台を使い,どのようなエンドピンレストに乗せ,どのような椅子に座っているのかが解らなかったのが残念だった.合奏練習に出掛ける間際だったので見たのは2分程度,それも残念だった. 2) たまたま今日の合奏練習中にエンドピンレストのワイヤーの留めが外れ,楽器のエンドピンはフリーになってしまった.私の楽器はかなり寝ているので一体どうなるかと思ったが,両方の太ももに乗ったままで若干ふらつくと共に強奏は出来なかったが,演奏は不可能ではなかった.この教訓としてエンドピンの紐の止め方は全ての部分で二重のものにする必要を感じた.
2007/7/1
■追記2 2003年3月27日のときどき雑記で下のように書いた.
”本当にチェロと全く同じコンセプトの構え方も”あり”かもしれないと思うようになりました.小文の中では”楽器の大きさ/重さから見てチェロそのものの構えは無理が生じると思うのだが〜〜.”と書いたのですが,無理が生じないような方法もあるかも知れないので研究してみます.その時楽器は斜めでなく真っ直ぐ立てることになるでしょう.”
しかしその時はその構え方に失敗した.このたび7月5日この日記をたまたま読み返して見て,今の構え方なら本当に実現出来るような気がして試して見た.
今回はどうやら出来る予感がする.楽器を左に寄せる,その結果得るのはより自由な弓使い.もしそれが出来るならひとえに当時にはなかった背もたれのお陰.もう少し時間を掛けて自信を持ててからその構え方の小文をUPしたい.7月1日に10ヶ月暖めた構え方をコンテンツに加えたばかりで何日も経ってないのに次の構え方に変わる予感を得るとは無節操との批判もあるかも知れないが,でも予感を得たものは仕方ないと言うしかない.とは言え,今回も失敗する可能性もあるかもしれない.しばらく自分自身の様子を見させて欲しい.
2007/7/8
|