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懐かしコンサート

当時若かった人たち皆、既にものを懐かしむ世代に入ったのか、この小文の題名どおりのコンサートを開催します、というお誘いの郵便が来た。約20年前に一年半在籍した広島のマンクラ仲間からである。在籍は長くはなかったが良い思い出の沢山あるクラブだった。

その又更に昔のこと、大学を卒業する際、追い出しコンパで後輩から我々卒業生一人ひとりに寄せ書きを貰った。私は自分宛の寄せ書きの真中に”我が青春ここに終わる”と書きこんだ。 確かにその時はそう思った。遣り残した事はない。

しかし広島のそのクラブでは、思いがけず二度目の青春を謳歌した.35歳を過ぎてだったが、幸いな事に謳歌する体力も十分過ぎる位に残っていた。

徹夜に近い比治山での合宿、いつもの練習後喫茶店での長いお喋りとクイズ遊び、大山登山と往復の列車内での果てしないトランプゲーム、大島連泊キャンプと海水浴、島根ドライブ、三段峡の紅葉狩り。妻帯者でありながら先頭に立って遊んで回る、まるで子供に戻ったような一年半だった。そのクラブは、私のその後を決める音楽的な大きな転換点にもなった。ギターからコンバスへシフトしたのだ。

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話を戻して、その”懐かしコンサート”は土日にかけて合宿形態をとり、日曜の昼に関係者と通りすがりの人達を観客にして演奏を披露しようというものだ。更に10年前夭折した指揮者F君を追悼する意味合いもある。亡くなった彼は共に肩を並べて楽器を弾くコンバスパート仲間でもあった。

近くに住んでいる当時の仲間とはるばる車を駆って参加した。

顔を合わせてみれば 何とか仲間を覚えているものだが、音楽ならそうはいかない。その後もずっと音楽をし続けている人達ばかりではなく、弾き方/合せ方のコツは一挙に取戻せるものではない。

とはいえ、コンサートの目的は聴き栄えのする音楽を仕上ることではなく、むしろ昔の雰囲気にひととき浸ってみようというものだ。その意味からすれば大成功、マネージをして頂いた人達のおかげで実に楽しい二日間を過した。演奏も昔やった曲を中心に、難しくないものを指揮者が用意していてくれた。指揮者数人の振りは昔と変わらなかった。

コンバスパートが複数居るというのは これも久しぶり、弾き方を打合せると言う作業が新鮮だった。

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学生時代 音楽をした人は、卒業した後でも若ければ在校時の勢いで近在の社会人サークルに入り活躍する事が出来る。やがて任される仕事の範囲が増えまた結婚/育児と人生の山場に差しかかれば心と時間のゆとりが少なくなって趣味の為に割けず多くの人が遠のく。

そして再び心のゆとりが取り戻せる年代になった時、同じ趣味に戻るのには一寸した勇気が要る。新しい趣味を始めるのなら、周りの誰もが新人として扱い自分自身も何も知らない事を納得済みだが、実績を持っている場合は過去の栄光と現実とのギャップに思いを致し、始める前から悩む事だろう。

でもこのような”懐かし”企画なら乗りやすい。乗ってみればそれがふんぎりになって再度合奏の世界に戻る人もいるだろう。このホームページを読んでいる読者はラッキーな事にずっと音楽を続けていると想像されるが、そのきっかけを掴めずにいる昔の仲間も読者の周りにいる事だろう。

もしそれが出来る立場にいるのなら、彼等の為に一肌脱いで見てはどうだろう。取り敢えずの企画として、かつての仲間を集めて練習会、もしくはコンパでも良い。コンパで誘って、ついでに楽器を持ってくるように仕向けてみる。多分一番楽しめるのはその発案者であるはずだ。

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話は変わって、少し前思いがけず大学時代の先輩からお手紙を頂いた.60歳になったはずのその先輩は、仕事も一段落したので所在地のマンドリンクラブに参加する事にした、との内容であった。それを読んで、同封してあった招待券を持って家内とその所在地、下関でのコンサートを聴きに行った。ステージでの演奏姿勢は、35年前のその先輩の姿とやっぱり同じだった。

私は大変嬉しかった。 一つは先輩が趣味に時間を使うゆとりを持てるようになった事に、もう一つは若い頃に熱中した音楽を忘れず、再び戻ってこられた事に。

今は長寿社会。 シルバー世代になってからが長いのだ。合奏の楽しさを知っての上で逡巡しているなら、先輩の様に少しの遠慮と気恥ずかしさを乗越えて再びこの世界に戻ってみてはどうだろう。若い頃のようにバリバリとは弾けないかもしれないが、その代わり歳と共に加わってくるものが、音楽に良い味付けをしてくれるに違いない。

もし、若い人で社会に出て音楽を続けているうちに、趣味に時間を割く事が出来ないほど忙しくなったら、どうぞ”いってらっしゃい”。それもとても大事なことだ。でも どうか、又時期が来たら戻って来て頂きたい。

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そんな魅力が音楽にはある。 合奏にはもっと。

2001/1/22

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