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好きな歌/心に残る曲

私の好きな曲の中からクラシック以外のジャンルに絞ってそれらをご紹介して見よう。それも羅列ではまとまりがつかないので小さい頃から時代を追って並べてみる。その時代々々を思い起こしてみた時に、記憶の奥底にある暗闇からゆらゆらと浮かび上がってくるものを網ですくうようにして書き留めた。こうして出来上がったものを読んで見ると気恥ずかしい気持ちになるのは何故だろうか。

*

■小学校低学年時代;
小野田小学校校歌
この歌はいまでも忘れていない。還暦記念同窓会ではタクトとマイクを渡されたが歌詞の一番はペーパーなしでリードした。”見よ竜王の山のさま 堂々としてゆるぎなく 万古のままにそそり立つ…”と、現実には中華鍋を伏せたように優しい姿の竜王山とひどくかけ離れて噴飯ものなのだが、歌うに当ってはお経を唱えるのにその意味を深く追求しないのと同じで何の問題もない。この歌を覚えたばかりの頃を思い出して見れば、青木先生を交えた校庭でのドッジボールが楽しかった。

六段の調べ 千鳥の曲
母が兄嫁など人に琴を教える時は六段の調べだった。私も始めの部分を手ほどきして貰った。千鳥の曲(琴尺八三味線の合奏曲)もよく聴くうちに好きになった。思えば我が家は大家族(3人の兄達が育った後なのに私が覚えている同居人数は9人)だったので主婦たる母は忙しいのだが、それでも生涯を通じて練習熱心だった。

お山の杉の子
劣悪な環境の中から子供達を明るく育てようと言う意図の感じられる曲は戦後にいくつもあるが、これもその一つ。この曲を思う時学校ではなく実家の屋内の様子が目の前に広がる。家のラジオで聞き覚えたのに違いない。”これこれ杉の子起きなさい お日様にこにこ 声掛けた声掛けた”

マツダランプの歌
東芝ランプの前身だったマツダランプのCMソング(男声合唱)だが歌の正式名は知らない。勿論これもラジオで覚えた。メロディも好きだったが歌詞も素敵なのでご紹介する。”町の灯りがお花になった マツダランプがお花になった とんとん峠の遠太鼓 楽しいお祭りもう近い”(正確かどうかは解らない)二番はすっかり忘れている。小さかった頃に見、又経験したさまざまな情景/感情を何故かこの短い歌はしみじみと暖かく思い出させてくれるのが不思議である。だからとても懐かしい。

雨降りお月さん
童謡から何か一つ挙げるとすればこの曲にしよう。昔の童謡には感情の湿っぽさが欠かせないと思うがこの曲にはそれがたっぷりある。嫁入りをたった一人で唐傘差して行くちょっと可哀相なお月さん。童謡ジャンルとしては少数派の三拍子ではある。この曲を母が歌うと最後はどうしても短調になってしまう。母は小さい頃短調ばかりしか歌わなかったのだろう。

■小学校高学年時代;
浜千鳥
4年生の時、自習時間だったかに皆で騒いで隣の組に迷惑を掛けたとして、大学を出たばかりの花田先生はみせしめに私一人を立たせ鉄拳制裁した。しーんと静まり返った教室の木の床へ一撃で仰向けにぶっ倒れてしまった。その放課後先生は私を居残らせたので再度お説教かと身構えたが、思い掛けない事にはオルガンの前に立たせ”三好、歌え”と伴奏を始めた。”青い月夜の浜辺には親を探して鳴く鳥の”と歌ううちに気持ちがほどけ、悪い事をしたとの思いから涙があふれ、わんわん泣きになってしまった。弾き終わると先生はオルガンの蓋を閉め、柔かい笑いを僅かににじませながら”よし帰れ”と短く言ったのだった。

冬景色 故郷を離るる歌
一般に文語体の歌詞は口語体や会話体の歌と比べて解りにくいという欠点があるものの、そこから引き出せるイメージの幅がずっと広く、味わい深いと思うがどうだろうか。冬景色”狭霧消ゆる湊江の 舟に白し朝の霜…”を歌うとその情景は何故か絵を見るように、歌詞にはないディテールまで思い浮かぶ。私にはすぐ上に二人の姉がいて歌を良く歌っていたので、姉達の好みに私はかなり影響を受けた。

灯台守 花
この二曲は私が歌える数少ない二部合唱曲。しかし現実にはいつも途中で音程があやふやになってしまう。輪唱はスポーツ的な快感だが、このような二部合唱にはしっとりした情感を覚える。

蛍の光
これは歌でなく器楽アンサンブルにアレンジされた蛍の光で、小野田小学校の下校時間に教室のスピーカーから流れていたレコードの曲を指している。私の心に残るのは三拍子の侘びしく物悲しいその編曲。薄い夕日が斜めに差し込むがらんとした教室でその曲を耳にすると涙が出そうになるので、それをこらえて校門を走って出るのだった。ほかの蛍の光ではこのような情感が湧かない。

■中学時代;
マリヒニ/メレ
ハワイアンの歌。生まれて初めて買ったEP盤45回転のレコードがこれ。いとこから曲名を聞いて興味を持ったような記憶がある。初めて買ったレコードというだけの事で、曲名は覚えているがメロディを忘れているという、この小文の中では特異な曲。レコードは当時本当に贅沢な買い物であった。中学時代に買えたのはこの1枚だけ。

■高校時代;
峠の我が家
アコースチック楽器を弾きながら歌うグループ、ブラザーズフォーの持ち曲でもあったのだが、それよりも友人がギターを弾きながらこれを英語で歌うのを聴いて、カルチャーショックを受ける。その歌を覚えたい、ギターも覚えたい。彼が歌うこの曲との出会いが私の音楽好きを増幅し、その後の趣味の道筋を決めてしまった。思えば中学2年生から高校卒業までの多感な時期に楽器に親しまなかったのが悔やまれる。

■大学時代;
禁じられた遊び アルハンブラ宮殿の思い出 ラ/ファルッカ 
高校時代に聞いたギターの音色が忘れられず、浪人になってからギター練習を始めたが、好きになる一方だったのでテクニックを習おうと大学に入ってしばらくしてからマンドリンクラブに入り、寮の友人からプロになりたいのかと聞かれた位に打ち込んだ。毎日のように練習したギターソロからはこの三曲を取り上げる。最後の曲はフラメンコ。他にクラシックのアレンジもので好きな曲が幾つもある。指揮者になっていなかったら一生ギターに打ち込んだかも知れない。

波路はるかに
ビリーボーン楽団。この楽団は明るくこだわりのないイージーリスニングな曲を得意にしたが、これもそう。マンドリンクラブに入って程ない6月か7月、部員10人余りで喫茶店に入ったが、談笑するうちにこの曲が流れ、一瞬 大学生活の無制約な自由に浸る幸せと、この曲の快活さが重なり合い、涙が出てしまった。

浜辺の唄 雨とコスモス
この二つはマンドリン合奏曲(4パート編成)から選んだ。浜辺の唄は中野二郎アレンジによるものだが、これを合奏すると逆光の海などに波がキラキラ光るさまが目に浮かんでとても好きである。雨とコスモスは武井守成(1948年没)の小曲。何度ステージで振っただろう。武井の作品はショパンのように感覚的な小曲が多く、とても日本的で魅力に溢れている。

さらばジャマイカよ マティルダ 他
黒人歌手ハリー/ベラフォンテ。彼の来日ステージをテレビで見ながら、程の良いトーク、好感の持てるステージマナー、伝わってくる人柄の暖かさと精気、カジュアルウェアの何気ない着こなしの良さ、何よりも歌の説得力に引き込まれた。

遥かな友に
マンドリンクラブが島根県宍道湖畔にある青年の家で合宿をした際、消灯の合図に毎夜流れたボニージャックスの合唱曲。磯部俶作詞作曲。これには本当にしびれてしまった。翌日から休憩時間を使ってマンドリンとギターの二重奏にアレンジ。それを同級生コンサートマスターとのデュオ持ち曲にしたが、後にマンドリンオーケストラ用に再アレンジ、コンサートのエンディングテーマ曲に使った。歌詞の一番をご紹介すると”静かな夜更けにいつもいつも 思い出すのはお前のこと おやすみ安らかにたどれ夢路 お休み楽しく 今宵もまた”

■社会人になってから;
悲しい酒 SweetMemories(大村雅朗作編曲)木馬の夢(高井達雄作編曲)こもりうた(團伊玖磨作曲/深町純編曲)
邦人歌手というくくりでの選曲である。美空ひばりの歌唱力を今更論じるのは野暮。フィーリングが合う合わないを遥かに超えて頭を垂れるのみ。スィートメモリーは松田聖子のヒット曲だが、歌も上手いと思うけれどアレンジテクニックが抜群に良いので作編曲者名も記しておく。このジャンルでは珍しくLPを買った。三曲目の木馬の夢と四曲目のこもりうたは息子に買った子供向けレコードに収録されていた。小鳩くるみの歌唱力と幼児の為だからと手を抜くことをしないアレンジに感心して彼女の童謡LPは更に買い増した。こもりうたはカセットに録音して車の中でよく聴いたほど。編曲者の深町純には興味を持ってその後彼のレコードも何枚か買った。

Feelin' alright? 
ジャズを好きになろうと何枚も買ったが中々没入出来ない。ところがアドリブは不可能ながら楽譜に書かれた簡単なジャズモドキ程度なら演奏する機会に恵まれたことがあって、そのようなものでもとても面白くて魅力たっぷりなのだが、一方で聴く側に回ると印象が違って聴こえるのは何故だろうか。でもそんな私に取ってこの曲は別格。ヒューバート/ロウズというフルーティストをリーダーとするコンボが演奏する聴きやすいジャズ。

群青 涙をふいて
行きつけのスナックでカラオケが始まるとそっと帰るのが常だった私だが、40歳台の後半に突如目覚めて車にカセットを持ち込み運転しながら練習した。その中でフィーリングが合った曲が谷村新司の群青と三好鉄生の涙をふいてだった。

Malaise en Malaisie(マンハッタントランスファー)Back in the U。S。S。R他(ビートルズ) ジャンバラヤ他(カーペンターズ)The King lost his crown、As good as new他(アバ)
外国のコーラスグループくくりでのご紹介。ほとんどが有名な曲なのでご説明するほどの事はないが、Malaise en Malaisie はバックに日本の琴を加えているように聴こえる(だから選んだ訳ではない)The King lost his crownは和声的に5度の連続を使ったりフォルテの前打装飾音を使う事などで”王”の性格を表現しているのが印象的。

*

出来心でこの企画に取り掛かった時はご紹介したい曲がこんなにあるとは思わなかった。実を言えばまだまだありそうなのだが、コップに水を満杯にして走って持って来たようにこぼれてしまい、皆さんに飲んで頂こうにも僅かしか残っていないような、そんな気がする。

2006/3/26

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